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日本PRO(Patient Reported Outcome)研究会代表理事 挨拶

 近年の医学における治療法の進歩は目覚ましいものがある。その中には新薬の開発や医療技術の革新などが含まれる。また、新しい検査法や画像診断の発達の開発によって、それらがもたらす治療効果をより詳細に評価することが可能となってきている。

 従来治療結果の評価法としては、生化学的検査、生理学的検査、画像検査および生存率などの医学的指標が重視されてきた。これらは、患者による主観的要素が入りにくく、再現性などを含めた数量的表現が容易で、世界共通に使用できることなどが医学の科学性を保証してきた。

 一方、治療結果の最も重要な評価者は患者であるが、彼らが受けとめる治療の影響はこれらの医学的指標だけでは表現しきれない。これらの指標が改善しているにもかかわらず、自覚できる改善度が少ないということもあるし、その逆もある。また、適切な客観的医学指標がなく、患者の主観的指標のみが評価の対象となる場合もある。つまり従来の医学的、客観的評価を補完する指標として、あるいは場合によっては主要評価項目として、治療に対する患者の主観的評価が測定される必要がある。

 また、近年、疾病構造が変化してきた。すなわち、治癒を目指す急性疾患の減少とケアを続ける慢性疾患の増加という現象である。高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満症、アレルギー疾患、骨代謝疾患、癌などが後者に含まれるようになった。

 これらの疾患においては、治療を一生継続する必要があり、患者が主体となる自己管理の程度が治療結果を大きく左右する。すなわち、患者が規則正しい服薬等が実行されるかどうかが重要な結果決定因子となる。これはアドヒアランスあるいはコンコーダンスという概念で表現されており、近年特にその重要性が認識されてきた。

 この治療実行度に大きな影響を与える要因は、患者の認識および評価、価値観である。その治療法は自分にとって重要であるか、どのような効果があるか、副作用はないか、定期的な実行が可能か、通常の生活への影響はないか、そのような主観的な評価が実行度に影響する。

 すなわち、これらの主観的評価を科学的に表現していくことが求められる。これはPatient Reported Outcome(PRO:患者によって報告される治療結果、アウトカム)と総称されている。具体的には、治療満足度、症状や機能の程度、QOL(Health related quality of life:生活の質)、治療への順守度などがあり、これらは適切な質問紙によって測定することが可能である。

 患者が主体となる疾患治療においては従来の医学的評価とともに重要であるが、実臨床においてはその認知がまだ不十分であり、各種疾患におけるPROの普及と発展をめざして日本PRO研究会を発足する。

 日本PRO研究会はその活動を通じて、患者と医療者に治療法に関するより包括的な情報を提供することを活動目的とする。

奈良県立医科大学 糖尿病内科学 教授
石井 均